へしおれたじそんしん

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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読んだこと

プロジェクト・ヘイル・メアリー
アンディ・ウィアー・著/小野田和子・訳
早川書房・2021日12月25日発行)
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC-%E4%B8%8A-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BC-ebook/dp/B09NBZLC7J



正直読み始めた時は「好きじゃない文章だな」というのが一番大きい。大きかった。直前に読んだのがゴジラS.Pだったのもあって、記憶喪失の無能(に見える)主人公にイライラが募る。募った。
上下巻のうち上巻の半分までフックがないのはだいぶ重い気がするが、そこまで行くと止められなくなってしまって悔しい。

コンタクトものでありながら五角形で五本足の岩石系宇宙人が相手で、それでも相手と対話ができて、思考の行き違いなく、星を背負って同じ目的のために力を合わせるというアイディアがすごい。イワパレスみたいな宇宙人と意思疎通ができて、しかも相手はめちゃめちゃに器用で工学の技能があり、無能に見えた主人公も状況に適応して宇宙人とコミュニケーションを取るようになり、相補的に問題解決への糸口を見出していく。参った。おれは降参した。
こういうのは大抵途中で密閉空間のストレスで喧嘩するギスギスパートがあったりするようなイメージを持っていたけど、オデッセイの作者なので二人とも科学と工学の専門家として終始星を救うための方策を探り続ける。物語が動き始めるとストレスなく読み進められたのはそういう人間関係的な無駄がないからだったと思う。

物語の根っこに関わるウソはアストロファージとエリディアン(と便利物質キセノナイト)くらいで、今ある技術でなんとかしようとするところがいい。オデッセイもそうなんだけど、リアリティは説得力なので、苦戦しながらも説明をつけて問題を解決する、そこに快感が生まれておれは気持ち良くなるんだね。

模型人(もけいんちゅ)がざわざわしていたので買ったけどしばらく積んでいたのを読んで、ロッキーとのファーストコンタクトまで読んで、はあ〜なるほどとなった。言葉がなくても物体はそこにあり、伝えたいことを伝えることができる。模型で何を伝えたいのか? 何を再現して何を読み取るのか? みたいなことをちょっとだけ考えました。

感情的な方向だと出発までの過去編に出てくる人間が大概好きになれないのでそこまで命をかけるか? となるところはなくはない。でも終盤「主人公も地球のために死にたくはない(が無理やりその場に置かれたら探究心と使命感で動いてしまう)」というトリックが明かされて、それが地球に帰ることよりもロッキーのために宇宙を探索する選択をすることの補強になっているのも上手くて、悔しい。

夜ふかしして読むくらいには面白い。『三体』よりはだいぶライトで読みやすいSFではあると思う。読みやすいし、ハッピーエンドだし。翻訳がもう少しおれ好みだったら、と思う部分はある。でも元の文体がこんな感じなのかもしれないし(火星の人は読んでいないがオデッセイの作者だし)、これくらいじゃないとロッキーとグレースの関係性もうまいこと表現できなかったかな。結局読んじゃったし。

☆彡☆彡☆彡☆彡

以上。
おわり。